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錬金術師と白い黄金 [錬金術]

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時はフリードリヒ・アウグスト1世(1670~1733)の時代のドイツ。300人以上の子供をもうけ、驚異的な怪力の持ち主であったことから「強健王(Mocny)」「ザクセンのヘラクレス」「鉄腕王」などの異称で呼ばれ、またその異称の所以を証明するために素手で蹄鉄をへし折るのを好んだと言われています。
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ザクセン選帝侯 フリードリヒ・アウグスト1世


1701年、王の前に一人の男が現れます。
19歳の若き錬金術師、ヨハン・フリードリッヒ・ベトガー
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ベルリンで金を作り出したという評判があり、鉱物や金属の知識を高く買われていました。その才能に目を付けた王は彼に「白い黄金」を作るよう命じます。


「白い黄金」と言ってもプラチナ(白金)とは違います。
「白い黄金」とは、当時ヨーロッパではまだ珍しかった陶磁器。当時はまだ中国や日本からの輸入に頼るしかなかったのです。

ベトガーは磁器の製法の秘密が漏れないよう、城郭に幽閉され、研究に没頭させられました。
しかし、何の糸口も見つけられません。
当時、東洋の磁器の製法は門外不出。秘密が堅く守られていました。ベトガーは何とか手がかりをつかもうと、各地から粘土のサンプルを集め、中国で磁器作りを見た旅行者の話を聞き、研究を重ねました。
「いつになったら磁器はできるのか」と王にせき立てられ、ベトガーは恐怖と焦りに駆られます。
ベトガーは実験の失敗を繰り返し、有毒なガスを吸いすぎたため、身も心も蝕まれていきます。
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ベトガーが幽閉されていたと言われるアルブレヒツブルク城
1710年に場内に王立ザクセン磁器工場を作ります。エルベ川がすぐそばを通るため、磁器の原材料や出来上がった磁器を運ぶのに便利でした。
しかし、研究を始めて3年、ベトガーは高温によって白くなるカオリンという土を突き止めます。
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↑ベトガーの磁器を作るためのレシピ
カオリンの他に雪花石膏も用いたようです。
そして遂に高温で焼くと白く輝く磁器を作ることに成功しました。
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白磁鍵型歓迎杯
王が訪れた際は、この杯で歓迎のワインが振る舞われたとされています。
実験を始めてから5年の月日が経っていました。
白い磁器にはレリーフや彫刻を施し、東洋にはないデザインを目指していました。

しかし、王はこれだけでは満足しませんでした。
次に求めたのは、色。中でも日本から執着したのは日本から伝わった柿右衛門の色絵。
ベトガーは更なる研究を求められました。この研究は磁器の開発以上の困難を伴いました。1000度近い高温で焼くため、絵の具を定着させることができなかったのです。
ベトガーは研究半ばで、孤独とアルコールと病苦の中、37歳でこの世を去りました。

王の要求を叶えるため、ウィーンからもう一人の男がやって来ました。
それは、強い野心を抱く、若く優秀な絵付師、ヨハン・グレゴリウス・ヘロルト。
色の開発に成功すれば高い地位を得ることが出来る、と色絵の具の開発に取り組みます。
酸化した金属を水に溶かし、赤を作ることに成功し、その後も、青、緑、黄色、若草色、さらには金や銀まで様々な色を作り上げていきました。
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ヘロルトの開発した顔料。今も秘伝の色として残されています。
当初は柿右衛門の作品をコピーしていましたが、やがて、独自のデザインを施すようになります。
それが、中国風の楽園を描いたシノワズリ-・シリーズ。
シノワズリ.jpg(1730年頃)

更に、王は新たな野望を抱きます。
何と「日本宮殿」と名付けられた磁器の宮殿を作ると言い出したのです。
全てを東洋風の磁器で埋め尽くし、磁器の動物園まで作ることを考えていたのです。

次に抜擢されたのは彫刻家のヨハン・ヨアキム・ケンドラーでした。
ケンドラーはわずか数週間で磁器の動物を作り上げました。
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1732年の作品と言われるアオサギ。
5年間でおよそ570体の動物を作成し、卓越した技術を活かし、東洋の技術にはない独自の造形表現を作り上げました。
結局磁器の宮殿は叶わぬ夢に終わりましたが。
更にケンドラーは、複雑な形を作り出すために、細かなパーツに分けて作り、そのバラバラなパーツをつなぎ合わせて一つの形にするのです。
彼の頃から使われている石膏型は、貴重な文化遺産として今も活用されています。
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最初にベトガーが研究したその工場は300年以上経った今でも残っています。




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Fereydun

大地と太陽の営みに代わり、術士が知と技で、土・火・水・風の四大を、新しい鉱物に変性する。産み出された作品が、西欧文明に新しい美意識を与える。
彼らは、霊的変性を成就した達人Adeptusではないでしょう。しかし、彼らの作業opusの成果は、現代も私達の生活を、高貴に変性させる霊威を持っていますね。人の心の美的世界こそが、彼らの術の達成領域だったのでしょうか。
by Fereydun (2016-11-21 09:04) 

Tarot-Reader

Fereydun様
コメントありがとうございます。
おっしゃる通りです。

>人の心の美的世界こそが、彼らの術の達成領域だったのでしょうか。

「人の心の美的世界」=「内なる神」ではないかと思っています。だらか彼らの達成領域は結局、内在神への信仰心であり、それが内なる神に繋がった瞬間、「賢者の石」のような作用を起こすような気がします。あくまで私の持論ですが。

>現代も私達の生活を、高貴に変性させる霊威を持っていますね。

私の生活も高貴に変成させるべく、食器棚にマイセンを…ぃゃ、何か高貴から遠ざかってますね。。。
by Tarot-Reader (2016-11-23 18:34) 

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